【横浜FC vs 町田】 ウォーミングアップコラム:高くて、上手くて、走れる“未完の大器”。戸島章は古巣に恩返し弾を誓う

2018年8月3日(金)


戸島章(写真)には、ロマンがある。

191cmの長身に、確かな足元の技術、加えてサイドハーフもこなせる走力も併せ持つ。成立学園高3年次には、全国的には無名な存在だったにもかかわらず、U-18日本代表候補に選ばれた。大型FWには夢がある。ゴール前に立っているだけで相手チームは震えあがり、ボールを集めれば点をバンバン決めてくれそうな空気が漂う。U-18の代表スタッフも、彼が2010年にプロ入りしたジェフ千葉のスカウトも、きっとそんな夢を見たのかもしれない。

しかし、周囲の(やや勝手な)期待ほどに、戸島が活躍してきたとは言いがたい。千葉ではリーグ戦の出場はゼロ。周囲に誤算があったとすれば、彼はその身長とは裏腹に、空中戦があまり得意ではなかったことだろう。長身FWに最も期待される部分がそれほどストロングでないとなると、他の要素まで心許なく見えてしまうのは仕方がない。当時JFL所属だったジェフ・リザーブズや藤枝でプレーした時期もあったが、2015年には当時J3の町田に期限付き移籍することになった。

 町田の相馬直樹監督もやはり彼に大器の片鱗を見たのだろうか。町田の担当記者や、町田に期限付き移籍した経験のある畠中槙之輔(東京V)らによると、「相馬さんがよく居残りで戸島にヘディングを指導していた」という。

2015年に町田で17試合に出場して3ゴールを挙げると、翌年J2に昇格した町田へ完全移籍。2016年は29試合に出場して無得点だったが、昨年は32試合に出場して6ゴール。中でもリーグ終盤の第38節、横浜FCが2−1でリードして迎えた85分に挙げた同点ゴールは、J1昇格プレーオフ進出の望みを絶たれた点で横浜FCサポーターにとって忘れられないだろう。

 ただし結局のところ、町田でもゴール前に陣取る大型ストライカーというより、その走力を生かしてサイドに配置されることが多かった。今年、横浜FCに加入した際も、その身長から昨年まで所属した大久保“ジャンボ”哲哉(現群馬)の幻影を重ねようとしたサポーターには物足りなく映ったかもしれない。序盤はほとんど出番に恵まれなかった。しかし第12節の讃岐戦で1トップでスタメン出場すると、ゴール前の混戦から今季初ゴール。第14節の熊本戦、第17節の東京V戦では途中出場からゴールを挙げ、存在感を徐々に増していくと、迎えた天皇杯2回戦。横浜FMとの横浜ダービーで、1トップとして奮闘し先制ゴールを挙げ、そこからリーグ戦でも3試合連続スタメン出場している。

 圧巻だったのは第24節の岐阜戦だ。イバと縦関係の2トップを組むと、後方からのロングボールをことごとく競り勝ち、足元に収まればキープして味方につないだ。「チームとして求められてることだし、この身長を生かさないとというのもあるので」と、若干はにかみながら語る背番号9は、「最近、そこにも自信を持てるようになってきたんで」と付け加えた。中澤佑二らJ1のディフェンダーを相手に渡りあった天皇杯120分の激闘が、未完の大器を覚醒させつつあるのかもしれないが、戸島はあくまでその自信のベースを「町田で相馬さんに鍛えてもらったおかげ」とする。

「居残りとか、相当やってもらいましたから(笑)。町田でやってたことを今も継続してできている。それが自信になっている」

その町田と今節、今季2度目の対戦。第13節のアウェイ戦ではスタメンでフル出場したが0−1で敗戦している。しかしあれから3か月、横浜FCで積み上げた自信は、確実に戸島を変えているはずだ。

「やはり特別な気持ちもあるし、点を取って、絶対に勝ちたい」。かつてマンツーマンで鍛えてくれた恩師に、恩返しゴールをプレゼントしたいところ。「空中戦に負けなくて、身長高いけどハードワークして、点を取れる選手」という彼の理想に近づくために。その可能性を信じる指導者、そしてトシマニアのために。戸島章には、そんなロマンがある。

文:芥川和久(横浜FC担当)


明治安田生命J2リーグ 第27節
8月4日(土)18:00KO ニッパツ
横浜FC vs FC町田ゼルビア

スタジアムナビ