【名古屋 vs 神戸】 ウォーミングアップコラム:成長し続ける大ベテラン・玉田圭司。“楽しんで勝つ”の体現者は満員の豊田で何を表現するか。

2018年11月2日(金)


楽しみながら勝つ。残留争いの佳境に差し掛かろうというこの時期、そして直接のライバルとの対戦を前に、玉田圭司(写真)は落ち着いた口調でそう言った。勝点34の14位という立ち位置はひとまずの安全圏だが、危険水域は依然として足元に迫っている状況の中、大ベテランの見せる自信はチームを力強くけん引してくれる。

玉田は今季、驚くべきシーズンを送っている。前半戦は負傷もあって5試合の出場にとどまっていたが、その5試合目、古巣でもある柏とのリーグ中断前最終節でスタメンフル出場を果たし、得点もマーク。風間八宏監督の大号令のもとフィジカル改革が断行された中断期には悲鳴を上げることもあったが、愛のムチを見事に力に変え、以降の試合では全試合でスタメンを張っている。もともとが技術ではいまだトップクラスにある選手だけに、身体が動けばプレーもキレを増す。「タマさんは本当にすごい」。チームの若手、中堅を問わず、背番号28の充実ぶりには舌を巻く。

自他ともに認めるサッカー通の彼は、6月のワールドカップロシア大会も自らの養分として現在の活躍につなげている。「モドリッチを見て、あんなに上手い選手があんなにハードワークをすることに感銘を受けた」。チャンスメイカー的な色合いも強く持つストライカーは、今は司令塔的な役割にその興味を移している。チームが抱える課題の一つである立ち上がりの悪さに触れても、「一つのプレーで流れを変えることも必要で、そこはオレがやっていかなければいけないところ」と、攻撃の成否を一手に引き受ける覚悟で試合に臨む。J1通算100得点まであと2と迫っていても、ことさらに得点への執着心を見せることはない。「まずはチームが勝つことを考えたい」という言葉はお決まりの常套句ではなく、玉田の心からの願望だ。

チームは夏の7連勝ののち、3連敗を喫してここ2試合は1勝1敗と不安定さが目立つ。ボールを保持するスタイルは戦略にはめやすい嫌いもあり、徹底的な対策に苦戦することもしばしば。そういった試合では決まって玉田がボールを受けてはパスを散らして状況の改善、打開を図る姿が見られるが、いつもうまく機能するとは限らない。「オレたちのやることを相手もわかってきていると思うし、そこをいなすほどの力はまだオレたちにはない」と、玉田は厳しい言葉で仲間の奮起を促し、自らは攻守に身体を張ってチームの成長と試合中の好転を待つ。それは痛みを伴い、ひどく疲弊する作業だが、いまの玉田はそれをまったく厭わない。独創的なプレーとアイデアで得点に絡むことを第一義としてきたかつての姿も頼もしかったが、38歳の玉田のスケール感には敵わない。

「最近はサッカーを観る時に、注目して見る選手が変わってきたんだ。今まではアタッカーが中心だったけど、今は中盤の選手を見ることが多くなった。これは自分のポジティブな変化だと思うし、今まではシュートやアシストをまずは考えていたけど、今はそこまでの過程をどうすればうまく行くかを考えてる。ハードワークは増えるけど、それも前向きに取り組める。それを今は突き詰めていきたい気持ちになっている」

攻撃の中心からゲームの支配者へ。玉田の影響力は年齢とともに増す一方だ。だからこそ対戦を楽しむ余裕も生まれる。フアン マヌエル リージョ監督率いる神戸を「すごくオレは興味を持って観ている」と目を輝かせ、イニエスタらビッグネームとの対戦も純粋な楽しみとして期待する姿は若手のようでもある。「今回は両チームとも残留争いをしているし、緊迫感があるかもしれない中でも楽しみたい。向こうには良い選手もたくさんいるから、そういう選手たちを見ながらプレーを楽しむこともしたい」。欲張りなのは昔からだが、プロ20年目を迎えていまだその貪欲さを失わないことにはただただ感嘆するばかり。得点についても「もちろん考えている」と意欲を隠さない玉田は今季の2得点をともに豊田スタジアムで挙げている。4万人超の大観衆も確実視されているこの場所でのゲームはこれが今季最終戦。整いすぎた舞台でテクニシャンが何を見せてくれるのか、我々の期待も高まるばかりだ。

文:今井雄一朗(名古屋担当)


明治安田生命J1リーグ 第31節
11月3日(土)14:00KO 豊田ス
名古屋グランパス vs ヴィッセル神戸

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