【名古屋 vs FC東京】大敗の後に主力が欠場。しかし問題ない。名古屋には和泉竜司がいるからだ

2019年8月29日(木)


困った時には和泉竜司(写真)がいる。それが名古屋の常識である。風間監督体制下のチームでは誇張でなくGK以外のほぼすべてのポジションを求めに応じて務めてきた万能選手は、右サイドバック不在という緊急事態に「いつものことですから」と涼しい顔で対応する心積もりを固めている。

首位のFC東京を迎え撃つ今節の名古屋は、宮原和也の出場停止に伴い、選手の配置換えを余儀なくされている。当初は吉田豊が右にスライドし、左には古巣対決となる太田宏介を起用することでの対応が予想されていたが、前節の終盤で吉田が右足を負傷。今週は公開練習時に姿を見せなかったことで、さらなる代役探しにスタッフは頭を悩ませることになっている。もちろん吉田が間に合えば右には背番号23が収まるだろう。しかし間に合わなかったら…。問題はない。名古屋には和泉がいるからである。

「FC東京は絶対に前から守備に来ると思いますし、前線には速い選手がいます。ハードワークを攻守においてできるチームでもありますし、そこは考えながら試合をすることにはなりますね。でも監督も言っていますが、ボールを失わなければカウンターは起きません。もちろんミスは起きるものなので、その時の切り替えの速さであったり、ミスの仕方、攻撃をシュートで終わるようなことも大事にはなってきます。そういう感じに相手を意識しますが、まずは自分たちがしっかりプレーすることが第一。そこを変えずにやりたいですね」

和泉が動じないのは理由がある。例えば彼が大事にしている基本的なプレースタイルもまた、ボールを失わないことであり、ボールをキープすること、ボールを確保することについては相当な自信を持っているからだ。加えて生来のフィジカルコンタクトの強さはDF顔負けで、今季は空中戦でも力強さを見せるなど成長の跡を見せてきた。そして「後ろからの方が逆にフリーになれる時もある」と目論むように、相手につかまりにくい攻め方ができるポジションにはある種のやりやすさも感じており、得意のドリブルも「目の前はボールを取るのが得意な選手ではないので」とむしろキレキレになる傾向もある。和泉のポリバレントな使い方の中でもサイドバックはかなり面白い部類に入るポジションで、練習では中盤に入ってプレーする“偽サイドバック”的な動きでも良いプレーを見せていたから楽しみにもなってくる。

FC東京には大学の先輩である三田啓貴や後輩の室屋成など良く知った選手も多いが、やはり気になるのは名古屋での先輩にあたる永井謙佑の存在だ。ルーキーイヤーにエースとしてチームを引っ張っていたスピードスターとは、今節はDFとしてマッチアップする可能性も十分にある。「しかも永井さん、グランパス戦でけっこう得点しているんですよね」と苦笑する通り、昨季からの3試合で永井は4ゴールを挙げるキラーっぷり。「あの速さはスペースがあると厳しいです。なければ完全に置いていかれることはないと思うので、うまく距離感を取らないと」。左サイド、つまり自分が右サイドバックだった場合には直接の対応も増える相手だけに、個人としてのイメージトレーニングに抜かりはない。一方でその言葉通り、短いスプリントの速さならば負けるつもりもない。実は和泉は、短い距離の速さはチーム随一の敏捷性を誇る選手である。

とはいえサイドバックとしての和泉には、守備力が求められているわけではない。本人もそれは百も承知で、与えられた役割はきっちり整理した上で起用には応えるつもりだ。この迷いのなさこそが彼の最大の強みである。取られたら戻ればいい。言葉にするのは簡単だが、言うほど簡単なことではない。しかし和泉はそれを難なくこなす懐の深さと強さを併せ持っている。

「守備は必要ですが、自分に求められているのはそこではないです。だからシン(中谷進之介)やマルくん(丸山祐市)に言って、自分が上がっていくつもりです。それにボランチのどちらかが一枚、しっかりバランスを見て戻ってくれると思うので、気にせずにどんどん前に行きたいですね。取られたら戻ればいいわけですから。そういった走力も自分にはあると思っているので、気にせずに走りたいです」

左サイドアタッカーとしての和泉が見せてきた今季のパフォーマンスは出色で、そこで彼を使わないもったいなさは残る。しかし一撃必殺の武器を持つ首位に対し、守備に穴を空けない安心感もまた彼はもたらしてくれる。前週は同じパロマ瑞穂のピッチで横浜FMに1-5の大敗を喫した。そこで間髪入れず迎えるFC東京との対戦に、1人ないし2人のスタメンを欠く状況は間違いなく苦境である。しかし名古屋には和泉竜司がいる。そして今の背番号29には、穴を埋めた上で決定的な仕事をしてくれそうな期待感もまた、備わっているのである。

文:今井雄一朗(名古屋担当)


明治安田生命J1リーグ 第25節
8月30日(金)19:30KO パロ瑞穂
名古屋グランパス vs FC東京
パロマ瑞穂スタジアム(名古屋グランパス)
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